「聖書をメガネに 桐生悠々の名を初めて聞いたあの時」の,小さくない恵みの波紋 その12 森弥栄子姉の第六話 十戒②

「聖書をメガネに 桐生悠々の名を初めて聞いたあの時」の,小さくない恵みの波紋 その12 森弥栄子姉の第六話 十戒

森弥栄子姉の第五話から第七話は、十戒を取り上げています。興味深い事実です。記述の背後に、竹森先生のご指導を覚えます。

第六話 十戒Ⅱ(出エジプト記 第二十章一〜一七)

神はこれらすべての言葉を告げられた。
「わたしは主、あなたの神、あなたをエジプトの国、奴隷の家から導き出した神である。
あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない。
あなたはいかなる像も造ってはならない。上は天にあり、下は地にあり、また地の下の、水の中にある、いかなるものの形も造ってはならない。あなたはそれらに向かってひれ伏したり、それらに仕えたりしてはならない。わたしは主、あなたの神。わたしは熱情の神である。わたしを否む者には、父祖の罪を子孫に三代、四代までも問うが、わたしを愛し、わたしの戒めを守る者には、幾千代にも及ぶ慈しみを与える。
あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。みだりにその名を唱える者を主は罰せずにはおかれない。
安息日を心に留め、これを聖別せよ。六日の間働いて、何であれあなたの仕事をし、七日目は、あなたの神、主の安息日であるから、いかなる仕事もしてはならない。あなたも、息子も、娘も、男女の奴隷も、家畜も、あなたの町の門の中に寄留する人々も同様である。六日の間に主は天と地と海とそこにあるすべてのものを造り、七日目に休まれたから、主は安息日を祝福して聖別されたのである。
あなたの父母を敬え。そうすればあなたは、あなたの神、主が与えられる土地に長く生きることができる。
殺してはならない。
姦淫してはならない。
盗んではならない。
隣人に関して偽証してはならない。
隣人の家を欲してはならない。隣人の妻、男女の奴隷、牛、ろばなど隣人のものを一切欲してはならない。」

 二週間前の日曜日、そして、先週の日曜日の二回にわたって、K先生、M先生が、旧約聖書の「出エジプト記」の中にあります「モーセ十戒」について、お話をしてくださいました。
 今朝も、「モーセ十戒」の続きをお話しいたします。十戒とは、神さまが、モーセイスラエルの人々を、エジプトの国から助け出しましたときに、モーセに、神さまがくださったプレゼントなのです。プレゼントと言いますと、ちょっとおかしな感じですけれど、神さまが、「人間は、本当に神さまに愛されているのだから、神さまが思っていらっしゃるような人にふさわしい生き方をしなさい。それには、十の神さまのお決めになった、お言葉に従って生きると、本当の人間らしい人間になりますよ」と、言うことだったのです。神さまに愛されるような、人間らしい人間になれると言う大切な戒め。神さまからのお言葉でしたら、そんな素晴らしいプレゼントって他にあるでしょうか。動物たちが、神さまから、十戒をプレゼントされたなんて、未だ聞いたことはありません。神さまを尊び、神さまから本当に愛されたモーセと、モーセに従って、エジプトを出て、神さまに導かれて、苦しい旅を我慢していたイスラエルの民だけが、いただいた贈り物なのです。神さまに救い出されて、しかも、贈り物をいただいたのですから、人々は心から感謝して受けねばなりませんし、神さまの思いに、自分を向けていかねばなりません。

 そして、そのことは、昔々のモーセたちだけのことではなく、聖書があることを知った、現代のわたしたちもまた、神さまの思いは何かしら、と考えます。その神さまの思いを、短いですがまとめて十ありますよと、教えてくださるのは、この十戒です。

 先週までのところは、天地をお造りになった神さまだけを、神さまとして、拝みましょう、と言うことでした。じっさい、今朝、教会学校に集まった皆さんは、モーセ十戒の初めの方にあります、神さまの思いに従ったと言ってもよいかもしれません。それで、先ほどお読みした、六つの戒めが続くのですが。子供讃美歌の「十戒」を見てください。皆さんのお父さまもお母さまも、そして、おじいさまやおばあさま、学校の先生も、みな、神さまが皆さんが生まれてくる前から、定めてくださいました。この世に一つの秩序として、大変難しいですが、皆さんを、正しく育て、導く人として、神さまがお遣わしくださったのです。

 ですから、そこには、神さまからの決まりに従ってできている、美しい関係があるはずなのです。美しい関係とは、お父さま、お母さまを心から愛しなさいと言うことなのです。これが、五番目の戒めです。

 六番目の戒めは、これは読んですぐに分かりますね。人間が人間を大切にできない。憎しみや怒りが心にあれば、本当のお友だちにはなれません。場合によれば、戦争や、人殺しに発展してしまいます。

 七番目の戒め。これは少し難しいですが、神さまは心の清らかさ、美しさを愛され、大切にされますから、わたしたち人間にも、清らかさ、美しさ、純粋さを持ちなさいとおっしゃっているのです。

 八番目の戒め。これもよく分かりますね。お友だちのものを盗んだら、どのようになるか想像できない人はいないでしょう。

 九番目の戒め。これは噓をついてはいけません、と言うことです。嘘をついていると、人と人の正しい関係が壊れてしまいます。

 十番目の戒め。他の人を羨んで、自分にないものを欲しがったり、他の人を自分の思いのままに利用したりしてはいけません、と言うことです。これも人と人の正しい関係が壊されてしまいます。

 今までの六つの戒めから、一つのことが分かってきます。どれもこれも、あなたもお友だち、あるいは、あなたの周りの人々、お家の人も入ります。それらの人たち、聖書では、「隣人」、隣にいる人と言う言葉を使っていますが、そうした、人と人の関係を正しく守っていきなさいと言っているのです。それには、この戒めを守りなさいと言っています。

 「十戒」の初めの四つは、神さまと人間の正しい関係はこうですよと言っています。今朝お話しした六つの戒めは、神さまを正しく信ずる人と人の関係はこうですよと、教えています。

 ところで、わたしたちは神さまもお言葉のように、まったく正しく「十戒」を守ることができるでしょうか。嘘を一度もつかないで生きている人はいないでしょうし、時には、お友だちを憎んでしまうこともあります。つまり、神さまの目には、悲しいことですが、わたしたち人間は罪あることをしてしまうのです。そのような罪を働いてしまうことのあるわたしたちに向かって、新約聖書の中で、イエスさまは、このようにおっしゃっています。「心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くし、思いを尽くして、主なるあなたの神を愛せよ。」また、「自分を愛するように、あなたの隣人を愛せよ」と。
「自分を愛するように、あなたの隣人を愛しなさい」と、イエスさまがおっしゃっています。このお言葉を、わたしたちは心の中に大切にしまいましょう。そして、イエスさまを、わたしたちが心から尊び、思いと力を尽くして礼拝するとき、わたしたちは神さまに愛されていることが分かります。神さまに愛されていることが分かってきますと、お友だちや、周りの人々をも大切にできるようになるのだと思います。

父なる神さま。
聖書を読みますと、イエスさまがどんなに沢山の人々を愛し、大切にしてくださったかがよく分かります。罪のある人々をも、愛してくださいました。イエスさまに習ってわたしたちもまた、互いに、大切にしあい、イエスさまが望まれる平和をつくることができますようにお導きください。アーメン。
一九八七・一〇・二五