市川治平元大佐(陸士三七・陸大四九)、わが伯父と私  その3 陸大と神学校における、研究と教育

市川治平元大佐(陸士三七・陸大四九)、わが伯父と私 
その3 陸大と神学校における、研究と教育

 市川伯父の影響は、確かに断片的であり、しかも時間の隔たりで、それが事実であるかどうか、現在私には確かめ得ないことも少なくないのです。しかも伝説が私たちの精神生活に侮りがたい影響を与えるように、市川伯父から聞いたこととしてそれらは、私の内面で長年にわたり作用し続けているのです。
 その一つは、陸大の教官に見る研究と教育の関係です。
いつ、どこで、どのような状況で聞いたか全く記憶がないのです。しかし陸大では、教官は、研究に専念する1年と教育に集中する一年を交互に繰り返し、研究と教育双方の充実を図っていたと市川伯父から聞いた思いが私の深部にあるのです。
 軍事教育でそうであるとすれば、神学教育でも当然、それに勝るとも劣らない研究と教育両面の充実があって当然。しかし神学教育の現状はと、危機意識を覚えたリ、悲しんだりしながら、陸大について伯父から聞いたとする内なる声が呼び掛ける挑戦に正面から立ち向かい小さな営みを継続してきました。

 私の歩みおいて組織としての神学教育機関に関心が向いたのではなく、そこで出会った恩師方へ心は集中したのです。そのお一人びとりの人格こそ、国家を挙げての軍事教育の鉄壁に対しても,びくともしない恵みの泉でした。
 日本クリスチャン・カレッジの渡邊公平先生、ゴードン神学院のロジャー・ニコル先生、上智大学神学部のペテロ・ネメシェギ先生をはじめとする恩師方の存在、生活と生涯に研究と教育の統合を見せて頂きました。
 特に、渡邊先生、ニコル先生そしてネメシェギ先生は、いずれも90歳を過ぎても、生き生きと研究と教育の実践をなされておられました。

 今79歳の誕生日を1月21日に迎えようとしている、この時、市川伯父の誇り高い陸大の教育実践についての伝説的思い出への応答です。
 「昼も夜も、読みに読み、
  夏きに書く。
  生涯の終わりまで。」と、「一寸の虫にも五分の魂」なのです。