順天堂大学医学部樋野興夫先生の活動報告

順天堂大学医学部樋野興夫先生の活動報告

「感謝申し上げます。
樋野興夫

第197回「がん哲学学校」
『人生から期待される生き方』〜母へのカラスの恩返し〜

正月を過ごしたアメリカのボストン在住の娘夫妻の所から wifeと帰国した。飛行機の中で、映画『永遠の0』を観賞した。「特攻で戦死したゼロ戦パイロット」の物語である。
筆者の叔父は、第二次世界大戦で、特攻で戦死した。幼い時から、母に毎日のように物語を聴いて育った。叔父と母との、神戸での今生の別れ、そして空を旋回して旅立つ姿、しかし、飛行機の故障で、鹿児島に不時着陸し、そこに、面会に行った祖父との別れ。本当に、涙なくして語れない。

今年は、酉年である。島根県出雲市鵜峠の実家の裏庭に羽を傷ついたカラスが降り立ち、母は、そのカラスに餌を与え育てた。傷が治り、空に旅立ったカラスが、一年後、再び現れ、裏庭の上空を旋回し、一羽を裏庭に落とし、飛び去っていった。母に対する恩返しである。此は、忘れ得ぬ、若き日の実話である。

1月7日の午後、「<がん哲学外来>第56回お茶の水メディカル・カフェ in Occ New YearSpecial」は、尺八、箏の演奏、お汁粉もあり、大盛況であった。
『がんに効く心の処方箋 一問一答〜悩みがスッキリ軽くなる〜』(廣済堂出版: 2017年1月5日発行)が Occの2階のCLC書店の棚に積重ねで置かれていた。会場では本のサインも行った。『明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげなさい』(幻冬舎発行2015年8月5日初版)の韓国語訳が、新年明けに送られえ来た。中国語訳(繁字体)も出たとの連絡が、ミシガン在住の娘の台湾の友人から、表紙の写真が、娘のメールに送られて来たようである。驚きである。

2008年1月に、順天堂大学で、「がん哲学外来」を始めた。昨年は、その「がん哲学外来」を、快挙と褒めて、応援して頂いた2人の恩師を失った。フィラデルフィア時代の恩師Alfred G. Knudson, Jr., MD, PhD(1922年8月9日- 2016年7月10日)が93歳で、癌研時代の恩師:菅野晴夫先生 (1925年9月13日— 2016年10月30日)が享年91歳で、逝去された。
主婦の友社」から2010年『がん哲学外来から見えてきたもの〜末期がん、その不安と怖れがなくなる日〜』、改定版が2012年『がんと暮らす人のために〜がん哲学の知恵〜』が発行された。今春、再改定版として、『人生から期待される生き方』が、出版される運びとなった。