「聖書をメガネに 桐生悠々の名を初めて聞いたあの時」の,小さくない恵みの波紋 その6 森弥栄子姉の第四話

「聖書をメガネに 桐生悠々の名を初めて聞いたあの時」の,小さくない恵みの波紋 その6 森弥栄子姉の第四話

★森姉を指導下さった、竹森先生との日本クリスチャンカレッジ一年生の秋の出会いを改めて感謝します。

第四話 神の民(出エジプト記 第十九章一〜六)
 イスラエルの人々は、エジプトの国を出て三月目のその日に、シナイの荒れ野に到着した。彼らはレフィディムを出発して、シナイの荒れ野に着き、荒れ野に天幕を張った。イスラエルは、そこで、山に向かって宿営した。
モーセが神のもとに登っていくと、山から主は彼に語りかけて言われた。
イスラエルの人々に告げなさい。
あなたたちは見た
わたしがエジプト人にしたこと
また、あなたたちを鷲の翼に乗せて
  わたしのもとに連れて来たことを。
今、もしわたしの声に聞き従い
わたしの契約を守るならば
あなたたちはすべての民の間にあって
  わたしの宝となる。
世界はすべてわたしのものである。
あなたたちは、わたしにとって
  祭司の王国、聖なる国民となる。」

 教会では、いつもイエスさまを中心にしてお話が進められています。それは、イエスさまこそ真の神さまでいらっしゃるお方を本当によくご存知でしたし、神さまの思い、み心を私たち一人一人に伝えてくださるお方だからです。そして、イエスさまがお話になり、また、なさったどのことも皆、あらゆることの源になっている神さまのご意志から現れてきたものばかりでした。
エスさまは、私たち人間を、いや、私たち一人一人のことを、誰よりも深くいとおしみ愛してくださいます。特に、イエスさまが「父なる神さま」とお呼びになっている神さまを、心からお慕いし、信じる人には本当の救いをくださいます。本当の希望を持つことをお許しくださいます。
いや、イエスさまを、今は愛せない、今はイエスさまを信じられないと言って、だだをこねている人がいたとしても、イエスさまはじっと辛抱して、そのだだっ子さんが、いつの日かイエスさまの愛に気づくことを信じて、待っていてくださいます。
神さまは辛抱づよく、私たち人間のわがままを見守りながら待っていてくださるお話は聖書のいろいろなところに書いてあります。

 旧約聖書の中には、イエスさまのお名前そのものは見あたりませんが、やがて神さまが、み子、イエスさまを人間の救い主としてこの世界に送り出す日まで、どれほど辛抱強く待っていてくださったか、というお話が書いてあると言ってもよいかも知れません。神さまが、人間のわがままをじっと耐えながら、待っていてくださったと言いましても、神さまは何もなさらないで、ただ待っていてくださったと言うのではありません。

 今日の旧約聖書の物語に関係しますが、エジプトで、苦しい目にあっていたイスラエルの人々が、モーセを先頭にしてエジプトの国から脱出します。モーセという人は大変信仰の深い人でした。神さまに顔を合わせて直接お話をすることができたという人は、旧約聖書の中では、モーセだけでした。モーセは神さまのご命令を信頼して、エジプトの国を脱出したのですが、モーセがひきいるイスラエルの人々は、神さまに感謝が足りませんでした。

 ですから、旅の間、水がない、のどが渇いた、お腹がすいたとか、目に見える金ピカピカの牛の姿をした像を造って牛を拝んだりしました。あげくの果てに、エジプトから出ないで、エジプトで苦しんでいた方がずっとよかったなんて、わがままの言い放題でした。

 もしも私たちが学校の遠足に出かけて、こんなわがままの言い放題をしたり、勝手なことをしたりして、先生やお友達を困らせたとしましたらどうなるでしょう。学校の先生もお友達も迷惑がって、嫌な顔をして怒るかもしれませんね。今度遠足の時には連れていってもらえないかもしれません。

 しかし、神さまには深い愛のお考えがあって、愚かなイスラエルの人々をもエジプトでの大変な苦しみから救い出してくださいました。
なぜ、救い出してくださったのでしょう。それは、何よりも神さまが、わがままで自分だけよければいいと考えやすい人間に、本当の生き方を知らせたかったからなのです。本当の生き方を知らせたいと思うほど、神さまは人間をいとおしんでくださいました。ですから、神さまの声に聞き従い、神さまがお約束だと言って約束してくださることを守るなら、あなた方は神さまの宝となるのですと、とても不思議に思えることをモーセに、神さまはおっしゃいました。

 私たちはみんなたった一回限りこの世に生まれてきました。生まれてきたということは、考えてみても大変なことです。神さまの大いなるご計画がそこにはあったのでしょう。神さまはこの世の中に無駄なものは決してお造りになりません。みんな神さまにとって必要なのです。そうだとしましたら、私たちは神さまのみ声をしるされた聖書に耳を傾け、神さまがお約束だとされたものは、どのようなお約束なのか知ろうではありませんか。

 モーセの時代から約三千年あまりが過ぎました。神さまがお約束のものだよと言って、現代の私たちにも聖書の中から語ってくださることは、「イエスさまの愛の業を信じる人になりなさい」と言うことです。イエスさまだけが本当の愛と信仰と希望を私たちに与えてくださるからです。イエスさまのみ声を信じて、それに聞き従って生きる子供になりましょう。神さまは、その子供を「わたしの宝」と呼んでくださるでしょう。
一九八九・五・二八