「発信・受信ー主にあるに恵みの一つ一つ」その10 沖縄の女性物理研究者・教育者からの便り

「発信・受信ー主にあるに恵みの一つ一つ」その10 沖縄の女性物理研究者・教育者からの便り

「お便り 2

宮村先生へ

 卒業論文の巻頭言について,再々考いたしました。初心に立ち返って,今の心境を綴ります。以前に,頂いた課題であります。過去の自分について再考することで,今の自分が見えてくるとのご指摘でありました。

 
卒業論文」巻頭言

The works of the Lord are great, sought out of all them that have pleasure there in.
Psalms 111:2

 真理の大海の中に,人は住んでいる。人は過去の経験や知識では説明できない新しい出来事に遭遇した時に,“真理を発見した。”と言う。
 果たして,そうであろうか。コロンブスアメリカ大陸発見がそうであったように,人はある時,新しい事実を発見するというよりもむしろ,それに気づかされるのではないか。
 また,自然法則を人が創り出すことはできない。天の万象も,それを司どる全ての法則も,それはすでにそこにあったのである。聖書に“日の下には新しいものは一つもない。”と語られているではないか。
 ただ悲しいかな,秒刻みで流動していく現代に於いては,その技術だけが先走りして,素直でゆったりとした心で自然現象を見つめていくということが,あまりなされていないのではないか。それに特定の専門分野にだけ深入りし過ぎて,自然現象の全体像を見ることができなくなっているようにも思える。
 確かに,その道の大家になるのは,すばらしい事ではあるがしかし,それはあたかも木のために森が見えなくなっているとしか言いようがないと思う。
 しかしながら,もし人が自然を畏れつつも,素朴な心で自然が直接語りかけてくることばに耳を傾け,たとえ道端の野の花にでも心を留めるようになるのなら人は,その行く手に洋々たる真理の大海が広がっているのに気づくであろう。そして,大海の真っただ中で,美しい貝殻を見つける喜こびに満たされることであろう。

大事なのは新しい創造です。
ガラテヤ人への手紙 6章15節 聖書

物理学とは,自然界のしくみを知ろうとする学問です。創造主なる神が,宇宙をかたち造り,それを保っておられます。神様が自然の中に隠しておられる法則を見つけ出していく,その楽しみと喜びを,砂浜で宝探しをするときの思いに例えました。実は,ニュートンが書き残した文章に思いを馳せつつ,卒業研究を終えたときの思いを綴ってあります。
 
 直後の大学院時代,私が携わった研究課題は,専門化された分野において,定量することが目的の実験研究でありました。正確さや緻密な手作業が要求される実験内容であり,扱っている現象,それ自体に強く興味をひかれる類のものではありませんでした。

 さて,ここ数年間,新たに取り組んできた研究課題があります。大学の夏休み・春休み等の期間中に,集中して実験を行ってきました。その研究を進めていく中で,大学院時代に修得した専門知識と技術が必要だったことが,良く分かるようになってきました。
2015 12 24