使徒の働き味読・身読の手引き・その72

沖縄で聖書を、聖書で沖縄を読む。
首里福音教会、その主日礼拝を中心にした営みの報告

「古くからの弟子マナソン」
使徒21章15、16節

[1]序 
今朝9月最初の主日礼拝。8月同様、9月も様々なことごとに直面しながら進む月であるとを教えられると同時に、それらすべての中をを導きくださるお方を見あげ続けます。
 15節、「 こうして数日たつと、私たちは旅仕度をして、エルサレムに上った」。
 カイザリヤから、いよいよ最終の目的地であるエルサレムへとパウロの一行は向かいます。エルサレムでいかなる困難が待ち受けているか十分承知。しかし「主のみこころ」がなされることを求めつつ、万全の旅支度をしてカイザリヤを出立します。主イエスに従う弟子として、十字架の道を歩み進むのです(ルカ9章51節、「さて、天に上げられる日が近づいて来たころ、イエスは、エルサレムに行こうとして御顔をまっすぐ向けられ」)。
 16節後半、「カイザリヤの弟子たちも幾人か私たちに同行して」。パウロの苦難の同行者として、またエルサレムまでの道を熟知し、エルサレムの実状に通じる実際的案内者として。

[2]古くからの弟子,キプロス人マナソン 
 カイザリヤ教会の代表者たちは、パウロの一行を、最も信頼できる人物、「古くからの弟子であるキプロス人マナソンのところに案内」したのです。マナソンの家がどこにあったかについて、二つの説。
①一つはカイザリヤからエルサレムまで、少なくとも二日かかる道程の途中にあったと見る理解。

②もう一つは、マナソンの家はエルサレムにあり、パウロの一行がエルサレムに着いたとき、まずマナソンの家に滞在したと見る説(私個人としては、こちらの説を取りたい)。いずれにしても、マナソンはカイザリヤ教会の人々から信頼されていた事実、また彼がその信頼に十分答えていたのは明らかです。
(1)古くからの弟子。
 ここで、「古くから」と訳されていることばは、11章15節では、「そこで私が話し始めていると,聖霊が,あの最初のとき私たちにお下りになったと同じように,彼らの上にもお下りになったのです」と「あの最初のとき」と訳されています。ですから,「古くからの弟子」と言われるとき、マナソンは最初からの弟子であり、ピリポ同様、二十数年に渡って主イエスを信じ、従って来たことを意味します。マナソンは歴戦の古つわもの、いざと言うとき、十分信頼に値する人物でした。

(2)キプロス人。
 マナソンは、「キプロス人マナソン」と呼ばれ、キプロス出身。
使徒の働きには、他に以下のようなキプロス人が登場します。
 バルナバ、4章36節、参照9章27節、11章25節。
幾人かのキプロス人、最初に異邦人への宣教をなし、ユニークなアンテオケ教会の形成に大きな役割を果たしています。このアンテオケ教会から派遣された、異邦人への宣教師バルナバパウロは、まずキプロスで宣教活動に従事(13章4節以下)。
マナソンは、このように福音宣教と深いかかわりのあるキプロス出身。
出身についての理解、福音とのかかわりで。この地(首里、西原、沖縄)が、主のため生き死ぬ多く者の出身地となるように。さらに出身の広い理解も必要。

(3)マナソン。
 使徒の働きには、ペテロやパウロと共に、ただ一度ワンポイント・リリーフ的に登場し、私たちの前から姿を消し、二度と姿を見せない人物たちもいて、それぞれ重要な役割を果たしています。
彼らの多くは種火的存在で、湯沸かし機の種火のように小さな、小さな火を灯し続けています。主なる神が善しとするとき、パッと燃え上がる。
その時には,種火は全く消え去る。灯し続け、消え切る生き方です。これが、古くからの弟子マナソンの生き方。

[3]「そこに泊まる」
 マナソンの家庭に、パウロの一行は泊まります。
マナソンの家庭は、主の御用のために開かれ、福音の基地として用いられています。
参照皮なめしシモンの家(9章43節、10章6、23節)。
ルデヤの家(16章15、40節)。
家庭は単に家庭のために存在する閉じられたものではないのです。受け入れられた福音が家族の心から溢れ、家庭は福音の基地として用いられ。
マナソンの家庭は、そんな開かれた家庭の一つなのです。

[4]結び 
 マナソンにならい信仰の善き戦いを戦い続け、死に至るまで主に忠実な歩みを歩み抜くことが出来ますように。みことばの約束(たとえばヘブル3章6節)に励まされ、歌い続けたいものです。
 「はじめておぼえし、そのいのりも、
  いまわのいのりも、わが主の御名」(讃美歌300番2節)。
 歌を忘れたカナリヤのように、いのりを忘れたキリスト者にならないように、祈祷会を忘れた教会にならないように。
 マナソンのように地味な歩みに徹して、マナソンのように開かれた家庭を築いて、「古い弟子・・・」と呼ばれるように。